ポニョの舞台・鞆の浦 工事差し止め判決 景観保護優先

2009年10月1日11時42分

印刷印刷用画面を開く

ブログに利用するこのエントリをブログに利用

ソーシャル・ブックマーク このエントリをはてなブックマークに追加 Yahoo!ブックマークに登録 このエントリをdel.icio.usに登録 このエントリをlivedoorクリップに登録 このエントリをBuzzurlに登録

写真:埋め立て・架橋計画で揺れる鞆(とも)の浦=広島県福山市、本社ヘリから、荒元忠彦撮影埋め立て・架橋計画で揺れる鞆(とも)の浦=広島県福山市、本社ヘリから、荒元忠彦撮影

図:  

 江戸期の港と町並みが一体で残り、宮崎駿(はやお)監督のアニメ映画「崖(がけ)の上のポニョ」の舞台として全国的な注目を集めた景勝地「鞆(とも)の浦」(広島県福山市)で県と市が進める埋め立て・架橋計画をめぐり、地元住民らが県を相手取り、知事が埋め立て免許を県と市に交付しないよう求めた訴訟の判決が1日、広島地裁で言い渡された。能勢顕男(あきお)裁判長は住民側の請求を全面的に認め、知事に埋め立て免許の交付をしないよう命じた。

 歴史的景観を保護するために大型公共工事の許認可を差し止めることができるかどうかが争われた初めての訴訟で住民側が勝訴した。各地の開発と景観をめぐる紛争に大きな影響を与えるのは必至だ。

 訴訟では、(1)埋め立て・架橋工事により、住民らが鞆の浦の良好な景観の恩恵を受ける利益が損なわれるか(2)事業によって交通が便利になったり、観光客用の駐車場などを整備したりすることで得られる利益が、景観を損なう不利益を大きく上回るといえるか(3)埋め立て免許が出されると回復不可能な重大な損害が生じる恐れがあるか――などが主な争点になった。

 判決はまず、鞆の浦の景観は住民らの利益にとどまらず、瀬戸内海の美観を構成し、文化的・歴史的価値をもつ「国民の財産ともいうべき公益」と指摘し、法的保護の対象になると判断。瀬戸内海の環境保全を趣旨とする「瀬戸内法」によっても公益として保護されていると述べ、景観を侵害する政策判断は慎重になされるべきだとした。

 そのうえで、行政側が実施しようとしている道路や駐車場の整備などの事業に必要性や公共性があることは認めつつ、景観保全を犠牲にしてまでの必要性があるかどうかについては「大きな疑問が残る」とした。さらに、事業が完成した後に景観を復元することは不可能で、事業自体の調査・検討も不十分として、埋め立てを認めることは知事の裁量権を超えており差し止めの対象になるとの結論を導いた。

 県知事は昨年6月、埋め立て免許の交付に必要な国土交通相認可を申請した。金子一義・前国交相は「住民同意ではなく、国民同意が必要」として認可に慎重な姿勢を示し、手続きは事実上停止している。